ローマ字の整理について

ローマ字による日本語正書法 - elm200 の日記(旧はてなダイアリー)
はてブにて、id:KoshianXさんから、こちらを紹介していただいた。これを読み、問題を列記できそうなのでつらつらと書いてみる。

日本人にとっては本来はあたりまえの話ではあるが、日本語は実際には仮名の通りには読まれているわけではない。
たとえば助詞の「を」は発音上は"O"であるし、「は」は"WA"、「へ」は"E"である。慣例的にローマ字では"WO"・"HA"・"HE"とそのまま表記することが多いが、これは英語圏の人が素直に読むと『うぉ』『は』『へ』になってしまう。(まあこれについては伝わらないこともないので許容してしまう考え方もあるだろうが)

また、「超法規」は発音上では『ちょーほーき』である。たとえば、「要素」を"YOUSO"と表記して、そのまま英語圏の人に読ませると『ゆーそー』になってしまう。"YŌSO"としなければ正しく読んではもらえない。同様に「超法規」も"CHŌHŌKI"とするのが発音的には正しい。

その他、「いう」が発音では『ゆー』になるなど、細かく見ていけば他にも色々とあるのではないかと思う。


で、つまり何が言いたいかというと、日本語をローマ字で表記するとき、発音を元とするか、仮名表記を元とするかによって全く違うアルファベットの羅列ができあがってしまう。(一般的に地名や駅名の表示は、発音を元にローマ字を表記していることが多い。例えば「東京」は”TOKYO”または”TŌKYŌ”であって”TOUKYOU”という表記を見ることは少ない。)日本人はつい仮名とローマ字を一対一で対応させることが出来ると思ってしまいがちだが、実際に一対一の関係が成立するのは五十音の表の上だけの話である。

さて、それでは日本語のローマ字表記というのは発音に基づくべきなのか、それとも仮名表記に基づくべきなのか?これはそれぞれ一長一短があり賛否が分かれるだろう。

話し言葉としての日本語会話を優先するなら、発音に基づくローマ字をつかうべきだろう。ただし多くの日本人は自分がどういう発音で日本語会話をしているのか正確に理解しているわけではないため、日本人にとってはハードルの高い表記法である。また、ローマ字を入口に仮名や漢字を学ぼうとする外国人にとってもローマ字と仮名の対応が不明瞭になるため難しくなる。

書き言葉として考えれば仮名表記に基づく方が簡単である。しかし、その場合はアルファベットをそのまま読んでも日本語にはならないという問題が残る。すでに地名や駅名など発音に基づく表記で普及しているローマ字をどうするかも悩ましい。ただ、外国人が日本語の文法を学ぶのであれば仮名表記(それも訓令式)のローマ字を使う方が体系的に整理されていて理解しやすいのではないか。

もし、ローマ字と日本語を完全に一対一で対応できるようにしようとするなら、日本語そのものに相当なメスを入れなければ不可能である。結局の所、ローマ字は今まで通り、発音に基づく表記と、仮名に基づく表記が並立したまま混在して使われるのであろう。


さて、あとはやや些末な問題だが、いくつか。

長音表記ついては"Ā"〜"Ō"というのが標準であるから、それに従うべきだと思っている。しかし、文字コードや入力装置の問題で長音記号が使えない場合も多く、代替表記法についても整理されるのが望ましい。^を長音記号の代わりに使うのがシンプルだと思うが…。(例えば「東京」であれば"TO^KYO^"となる)

訓令式ヘボン式についてだが、発音に基づく表記であればヘボン式を使うべきだし、仮名表記に基づく場合は訓令式という具合に使い分ければいいのではないかと思う。ただし、ヘボン式については、明治時代の発音であるから、現代日本の場合にどう発音しているかはもう一度見直すべきである。(「ふ」については現代では"HU"の発音の方が一般的であろうし、ラ行は"R"と"L"の発音が混在しているようである)

同音異義語については、ローマ字としては対策する必要はないと思う。口答指示と同じだと思えばいい。前後の文脈で判断すればいいし、間違えそうなら言い換えるべきだ。(ローマ字表記する場合は常に日本語も併記するとか)

(2009/11/10 読みにくかったので全面的に書き直し)